ヨコスカ人物魅力発見伝『神奈川和服美整』 横須賀に息づく「着物文化の守り人」

2026-04-21 ヨコスカ人物魅力発見伝『神奈川和服美整』 横須賀に息づく「着物文化の守り人」

横須賀 着物文化の「最後の砦」神奈川和服美整・川島正博さん

「タンスに眠っているお母さんの振袖、どうしよう」「久しぶりに出したらシミが……」
そんな着物にまつわるあらゆる悩みに、確かな技術で応えてくれる会社が横須賀にあるのをご存じでしょうか。

今回お話を伺ったのは、横須賀市で実家が営んでいた「しみ抜き」業を継ぐため、大企業のサラリーマンから呉服業界へと転身した、「神奈川和服美整」オーナー・川島正博さん。業界の表も裏も知り尽くす人物です。


【異色のキャリアが拓いた「攻め」の呉服業】
創業50年を迎える神奈川和服美整。
その歩みは、創業者・川島さんの意外な経歴から始まります。
出発点は、呉服とは無縁ともいえるフイルム業界「フジカラー」の営業職でした。

家業である染み抜き業を継ぐ決意を胸に、営業マンから一転。
昭和50年、「神奈川和服美整」を創業します。
老舗がひしめく呉服業界において、同社は後発組。
しかし、その不利を覆したのが、企業で培った社会経験と卓越した営業センスでした。
当時の呉服業界は分業制が主流で、職人は依頼を「待つ」のが当たり前。
そんな常識に風穴を開けるように、川島さんは自ら車を走らせ、注文を取りに行く「集配システム」をいち早く導入します。

「湯のし、湯通し、仕立て、そして染み抜き、丸洗い……すべてを一貫して請け負いました。呉服店が工程ごとに別々の職人へ依頼する手間を省くことで、確かな信頼を築いてきたんです」

その結果、最盛期には38名の従業員を抱えるまでに成長。
異業種で磨いた視点と行動力を武器に、まさに“攻め”の経営で、伝統業界の常識を塗り替えたのです。

【託されるのは「一点もの」 ~ママ振袖から歌舞伎役者や皇室の衣装まで~】
神奈川和服美整の確かな技術と、川島さんの経営手腕を物語るのが、その幅広い顧客層です。
取引先は、デパートや大手呉服店をはじめ、成人式向けのレンタル着物店や寺院、さらには個人のお客様まで多岐にわたります。ネットワークも神奈川県内にとどまらず、京都や東京をはじめ全国へと広がっています。

時には、加賀友禅の著名作家による作品や、誰もが知る歌舞伎役者、さらには皇室からの依頼が舞い込むこともあり、高価な“一点もの”を預かる緊張感がこの仕事の醍醐味だといいます。

一方で、近年特に増えているのが「ママ振袖(ママふり)」の相談です。
これは、お母さんの振袖を娘へと受け継ぎ、成人式で着用するというもの。世代が異なれば体形や似合う色も変わるため、仕立て直しが必要になるケースも少なくありません。

「正絹(絹)の着物は、丸洗いして、一度ほどき、着る人の寸法に仕立て直すことはもちろん、色を変えることもできます。どうしても取れない古いシミは、上から柄を描き足して隠すこともできる。正絹の着物は手入れが必要ですが、修繕や染め替えができるサステナブルな服。正絹の着物は、そうやって世代を超えて長く引き継いでいくことができるんです」

一点ものの価値を守り、次の世代へとつないでいく。
その仕事には、着物への深い理解と責任が求められています。

【 「着物ブーム」の陰に隠れた、職人技のいらない世界】
観光地に行けば、華やかな着物姿の若者や外国人を目にする機会が増え、一見すると着物文化は再燃しているようにも見えます。しかし、川島さんはその光景を複雑な心境で見つめています。

「今、街で見かけるものの多くは、安価な化繊(ポリエステル)で作られた中国製のレンタル着物です。
これらは言わば『着物の形をしたファストファッション』。家庭用洗濯機で洗える上、染め直しや仕立て直しなどはできない使い捨てタイプの商品であるため、私たちが持つような高度なメンテナンス技術は必要とされません」

こうした化繊着物が主流になることで、本物を支えてきた職人はどんどん必要とされなくなっています。
この仕事に欠かせない「湯のし機」など特殊な機械を作るメーカーや、その機械を直せる修理屋も姿を消しています。
「着物風ファッション」の人は増えているのに、着物にまつわる本物の職人技は死んでいく。
そこには抗えない厳しい現実がありました。

【神奈川県内唯一 和服文化を支える最後の拠点】
残念ながら商売相手である呉服店が年々廃業し、それに伴いメンテナンスを担う下請け業者も姿を消しました。

かつては多くの同業者がいたこの世界ですが、現在、神奈川県内で呉服業界の下請けとして、大規模に和服の洗いや仕立て、修繕を請け負っているのは、すでに「神奈川和服美整」1社のみとなりました。

「うちには現在3人の職人がいますが、職人の技は習得に最低10年はかかります。しかし、他へ転用できる技術ではない。専用機械のメーカーも廃業し修理も難しい。この仕事と技術は私の代で終わると考えています」

後発として業界に飛び込み、新たな視点で呉服業界を合理化する改革を続けてきた川島さん。
現状に憂いながらも、川島さんは今も飄々と集配に走り、持ち前の営業力で仕事を受注しています。
「神奈川和服美整」は、いつの間にか神奈川県唯一の「着物文化の守り人」となっているのです。

【着物は、着ることが一番の手入れ】
「やっぱり日本人には和服が似合う。だから自分も着てみたい」そう思いながらも、「着るのが大変そう」「手入れが難しそう」と感じて、浴衣でさえ箪笥に眠らせてしまっている方は少なくありません。

そこで、難しそうに見える着物のお手入れについて、川島さんにコツを伺いました。

「一番の保存方法は、定期的に着て風を通すこと。それが何よりの虫干しになります。海外旅行などで着ると、それだけで周囲からの扱いが変わったりもしますから、ぜひ手軽に着て楽しんでほしいですね」

湿気を防ぐには、年に何度かエアコンの効いた室内で半日程度広げておくだけでも十分だそうです。
「広げたらたためない!」という方は、包みを開けておくだけでもよいとのこと。

また、着付けのハードルを下げるために「作り帯」へのリメイクについても推奨しています。
「大事にしまい込んでダメにするくらいなら、作り帯を活用して日常で楽しめばいい。着物を日常使いしている和装の先生などは、作り帯をうまく活用して飛行機の中でも和服で快適に過ごしているようですよ」

【プロが教える、着物のお手入れのコツまとめ】
・浴衣(綿): 家で押し洗いして、あて布をしてアイロンをかければOK!難しく考えなくて大丈夫。
・ウールの着物:水洗いは厳禁。色のない汗染み・日本酒などは見えなくても時間が経つと黄変するため、しまい込む前に専門業者にお手入れを依頼するとよい。
・正絹(絹)の着物: 水洗いは厳禁。色のない汗染み・日本酒などは見えなくても時間が経つと黄変するため、しまい込む前に専門業者にお手入れを依頼した方がよい。

★保管場所: タンスの下段にしまい込む人が多いが、実は湿気のたまり場なので上段にしまった方がよい。さらに、定期的にエアコンの効いた室内で風を通すだけでカビのリスクは激減します。

★神奈川和服美整では、個人からの注文にも親身に対応しています。
洗い、仕立て、修繕、作り帯など、和服のことなら何でも相談してみてください。

参考)小紋の丸洗い 6,000円~/帯の丸洗い4,500円~
ママ振り(丸洗い・仕立て直し) 10万円~
帯を作り帯にリメイク 6,500円~
(令和8年4月現在)

★取り扱い加工
湯のし、本湯通し、絞り巾出し、ガード加工、柔軟加工、防カビ加工、帯電防止加工、粘着防止加工、硬糊加工、商品洗い、商品補正、商品整理、ヤケ直し、紋上絵、縫い紋、加賀紋、刺繍、金彩、丸洗い、しみ抜き、色ハゲ、地直し、柄描き、洗い張り、漂白、色抜き、吹雪加工、柄染め、無地染め、堅牢染め、草木染め、暈し染め、地色替え、裏打ち、仕立て、帯仕立て 他 呉服(和服)のことならなんでもご相談に応じます。

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ショップ名:神奈川和服美整(かながわわふくびせい)
代表:川島 正博
TEL:046-856-4938
FAX:046-856-9248
アクセス: バス 縦貫道下停留所 徒歩3分
車 一騎塚交差点から車で1分
地域:武山
所在地:〒238-0315神奈川県横須賀市林2-4-1
HP: https://www.besay.biz/
営業時間:10:00~16:00
●弊社営業日・営業時間内に不都合の方はお電話でお問い合わせ下さい。出来る限りご希望に沿うよう対応させて頂きます。
店休日:水、木、土、日、祝
駐車場:有り
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【画像】
メイン)川島正博さん 画像1)~4)職人さんと修繕個所を確認中 画像5)糸がずれて白く浮き出た部分を修繕したりします 画像6)染料 画像7)作業場 画像8)職人さん作業風景 画像9)手足が長い現代人に合わせて幅が広くなる反物

<SU>ヨコスカ人物魅力発見伝vol.2

呉服総合加工元 神奈川和服美整